センターニュース No.59

(発行・2005/10/15)「電話相談を受けて」より転載

刑事告訴を考えるときに

加害者を法律で罰して欲しいと望む被害者にとって、警察は唯一の窓口です。警察のほうも、近年は、被害者相談のためのホットラインを設けたり、「性被害にあわれた方々へ」などとするメッセージを発信したりしています。

 メッセージの内容は、おおかた「勇気を出して届け出を」とか「ひとりで悩まずご相談ください」というものです。また、そのあとには必ず、あなたの勇気が犯罪をなくすことに繋がりますなどといった、励ましとも脅しともとれる言葉が続いていますが、いずれにしても訴えたい意思のある被害者にとっては、警察が、被害にあったら来てくださいと、意欲的に言ってくれているように感じます。

 訴えることを決めた被害者は、警察を訪れ、加害者を罰して欲しいという思いで事件を伝えます。事情聴取や証拠の提出、被害のあった場所での実況見分や、状況の再現や写真撮影など、必要といわれることにはその度、懸命に応じます。事件とは関係のないプライバシーや性体験などを聞かれたとしても、告訴したからこうして捜査をしてくれているのだと考えます。そのため、協力しなくてはならないと、かなりのことも我慢します。しかし、この時点では、警察は正式に告訴を受理していないことも少なくありません。

 警察は、被害にあったら「届け出を」と勧めていますが「告訴を」とはいっていません。性被害は親告罪ですから、加害者を罰するには、被害を届け出るだけではなく、告訴が必要です。被害者が警察へ行くのは告訴のためですが、警察では、被害者の話を聞き、調べを行い、事件として扱う気になったときにだけ告訴として受け取るのです。

 被害者は、そうとは知らされませんし、そういうことは公にされていませんから、警察に告訴したはずなのに、そのあとの進展がない場合は悩まされます。被害者の訴えがどう扱われ、どうなるのか、本来はきちんと説明されるべきことですが、実際はそれも警察の気持ち次第です。また、そこまでいかないうちに、被害者の話を聞くだけで、これは事件にはならないと帰されたり、あなたのほうが悪いという対応をされるのも珍しいことではありません。どうしたらいいのかと聞かれることもしばしばですが、警察をチェックできる別の機関はないため、決め手になるような対策はないのが現実です。

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