(発行・2005/4/15)「電話相談を受けて」より転載
家族や周囲に知られずに訴えられるか
加害者を訴えたいが、家族や周囲に知られずに訴えることはできないかと尋ねられることがあります。
まず始めに「訴える」という行為には二種類あります。ひとつは、警察に犯罪事実を告げ、加害者を罰して欲しいと意思表示することで、これを「告訴」といいます。もうひとつは、加害者に対して損害賠償を請求するため、民事的に訴えを起こすことで、これは「提訴」といいます。
被害者の年齢が未成年(20歳未満)の場合は、本人ひとりでは告訴や提訴をすることはできません。親権者である父母、親権者がいないときは後見人が必要ですので、未成年者が家族に知られずに訴えるということは、事実上不可能といえます。
成人している人が警察に告訴するという場合は、被害のことを家族や周囲には知られたくないという要望を、予め伝えることができます。基本的には、加害者を告訴するということは、警察にその事件の捜査を求めるということです。捜査には、事件の起きたところの実況見分が必ずありますし、必要と思える人の事情聴取も行なうでしょう。被害者の要望が叶うかどうかは、被害の起きた場所や状況、加害者が罪を認めているか否かや、捜査に当たる人の考え方で大きく変わってくるでしょう。例えば、被害者は、家族とは遠く離れて生活していて被害にあったという場合、遠方の家族にわざわざ事件を伝えて事情を聞く必要はないと判断されれば、警察によって知らされるということはなくて済むはずです。
もうひとつは、加害者が弁護士を頼むか、そうでなくても、事件が起訴されれば必ず弁護人がつきます。この弁護人が弁護活動のためにどう動くかについては予測できないことです。良識ある判断を望むほかありません。
損害賠償を請求する民事裁判では、訴えた原告(被害者)と、訴えられた被告(加害者)との争いですので、加害者とその弁護人が、どういう行動をとるかというところが問題になります。これも、被害の状況と、その人たちの意識や事情によって異なるでしょう。
裁判は公開が原則ですが、申し立てをして裁判官が認めれば、名前は仮名を使用したり、刑事裁判は非公開にしてもらうこともできます。