センターニュース No.57

(発行・2004/12/15)「電話相談を受けて」より転載

「自分も悪かった」と思うとき

センターの電話相談のゆるぎない基盤は、「あなたは悪くない、被害にあったのはあなたのせいではない」ということです。

 しかし、社会では、被害の話を聞いたとき「でもそれは彼女のほうも悪いんじゃないか」という反応をする人は少なくありません。そして、被害者自身も「被害にあったのは、自分にも悪いところがあったから」と思っていることがあります。

 そう思っている被害者に対して「あなたは悪くない」と伝えたとき、それで気持ちが楽になったり安心したという人はたくさんいます。しかし、中には「やはり、自分も悪かったのです」と、このことにとらわれている人もいます。そして、社会から責められる上に自分で自分を責めています。このとらわれの元はどこにあるのでしょう。

 自分も悪かったと言っているその内容とは、例えば、あのときもっと早く家に帰ればよかったとか、誘いを断ればよかったとかいうものです。このように、あのときこうすればよかったとか、こうしなければよかったと思うことは、日常の様々な場面で誰にでもある、当り前の感情です。あなたは悪くないというのは、この気持ちを否定しているのではありません。出来事に対して「こうしなければよかった(つまり、そうした自分が悪かった)」と、何かを悔いることは、人間の素直で自然な気持ちであり、これは犯罪の原因とは全く無関係なものです。

 こうした気持ちは、どこまでも個人のものですから、そう思うのも思わないのも自由であり、自分のコントロール下にあるものです。人に判断されて押し付けられるものではありません。それを、社会のいう「被害者のほうも悪い」という犯罪の責任のすり替えに結びつけてしまうところに間違いがあります。混同しないことが大事です。

「被害者のほうも悪い」というのに対して「自分も悪かった」と被害者が言ったとき、共通のことを話しているかのように錯覚しがちですが、前者は加害者擁護と犯罪の容認を意味しており、後者は個人の自然な気持ちの動きを言ったもので、中味は全く別のものです。別のものは別に、はっきり分けて考えれば間違いがありません。
 もし、身近に、被害にあったのは自分も悪かったと、自分を責めている人がいたら、ぜひこのことを伝えてください。

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