センターニュース No.52

(発行・2003/4/15)「電話相談を受けて」より転載

被害者支援とは(2)

前号で、被害者を支援するのは、何か特別な行動をすることばかりではなく、一人ひとりが身近なところで、加害者に利用されないために「何もしないこと」も、大きな被害者支援に繋がることを述べました。知らず知らず加害者の側に立ってしまわないために、強姦や性暴力の問題は、自分たち女性全体の問題なのだという認識を持つことが大切です。
 なぜ女性全体の問題なのかは、強姦が起きている社会背景を見ればわかります。強姦や性暴力の根本にあるのは、女性蔑視です。つまり「女は男より下の立場だ」、「男の思い通りにするのが女の生き方だ」という、男優位の思想です。これは社会規範となり、女と男の立場を規定しています。その本質は公然とはびこるポルノ文化が象徴しています。こうした性差別社会の仕組が、強姦を容認し続けているのです。
 女性なら誰も皆等しく、この人権侵害に晒されています。性差別社会の中にあって、差別される女性と差別されない女性という分け方はありえません。同様に、被害にあった人とあわない人という、別の立場もないのです。この問題の前には、女性は皆同じ立場に立たされています。「彼女の被害」は「女性たちの被害」に他なりません。
 しかし、自分は別の立場にいると思うと、女性だから被害にあうという基本的なことが見失われてしまい、男女間の個別の問題に見えてしまいます。そうすると被害の事実を受止めるよりも、その個別の状況に関心が向きます。加害者を知っている場合は、そっちの話も聞いた上でなければ判らないと思ってしまいます。加害者が何を言うか、本当は誰もが分っていることなのに、それに耳を傾けるというのは、加害者の立場に取り込まれていることです。
 また、別の立場という線引きからは、被害にあった人とそれを助けてあげる人という意識が生まれます。すると何かしてあげなくてはと焦ったり、何もできないからと無力感に襲われるなど自分の悩みで押し潰されます。更に、助けてあげる人と助けられる人の間には、一定の力関係が発生してきます。そこには、圧力とコントロールの力が潜んでいます。こうしたことは、エネルギーの使い方を間違っているばかりか、どちらにも不利益になります。
 被害者を支援するためには、常に被害の根本に目を向けることが大切です。  

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