(発行・2001/12/15)「電話相談を受けて」より転載
加害者の責任
東京・強姦救援センターが電話相談を始めてから18年が経ちました。
この間、発生した問題に対する社会的な支援態勢は、被害者の保護を目的とする法律ができたり、民間や公的な相談機関が増加するなどの変化が見られますが、犯罪が発生する状況は一向に変わりません。強姦を生み出す温床は、放置されているといえます。
最大の問題は加害者の責任を追及しないことです。女性が強姦や痴漢の被害にあっているのに対して、その原因を正しくとらえずに、被害者である女性の側を責める現実は依然として続いています。
その典型的な現象が、最近のいわゆる痴漢の冤罪(えんざい)問題です。裁判で無罪判決が出たという時、マスコミはこぞって痴漢が冤罪だったと大きく報道し、あたかも訴えた被害者にその責任があるかのような記事が流されます。このような、向けるべき矛先を取り違えた報道には問題があります。痴漢の男は現実に数え切れないほどいます。毎日毎日、痴漢犯罪は起き続けています。ひとつの事件が仮に冤罪だ、無罪だとするのなら、どこかにいる有罪の男の責任と、有罪の男が易々と逃げられる状況にこそ意識を向け、糾弾すべきです。冤罪を大きく問題にし、間違いもあるとか、間違われるのがイヤだと騒ぐなら、逃げ隠れしている痴漢犯や男たちすべてに対して、「痴漢をする男がいるから、犯人と間違えられる危険が痴漢の数ほど生まれる。原因を作るな、痴漢をするな」と追及すべきであり、怒りを向けるべきです。
社会の目が、被害者に対してではなく、加害者の責任を問う方向にいかなければ、犯罪はなくなりません。男たちがしなければ、痴漢も強姦も起きないのです。この自明のことを、誰もが分からないふりをして、考えようとしていません。反対に被害者が常にチェックされています。さらには、「強姦をする体力があってこそ男だ」とか、「混んだ車内で身動きできなかっただけだ」と、強姦や痴漢が正当化され、「男は生理的に我慢できないからしょうがない」「被害者が誘った」などという言い逃れが横行しています。
社会的に加害者の責任が容認されているのと、追及されるのとでは大きな違いです。このような正当化や言い逃れを許さないことが、強姦を生み出す温床を変える第一歩となります。