センターニュース No.41

(発行・1999/8/15)「電話相談を受けて」より転載

告訴後「示談」を持ちかけられたら

被害者が警察に告訴をした場合、加害者の弁護士から「示談」の話しを持ちかけられることがあります。

示談とは一般に、当事者間で話し合いにより解決をはかることですが、加害者の弁護士が被害者に提示する示談は、加害者にとっての利益が目的です。早く言えば、示談金と引き換えに、検察が起訴する前ならば、被害者に告訴を取り下げさせることが一番の目的であり、起訴された後では、判決の時に刑を軽減させることが目的になります。このような示談交渉は、加害者が謝罪し、損害賠償を申し出たとしても、被害者にとっては腹立たしいものです。

一方では、刑事裁判で加害者がたとえ有罪になっても、刑罰は国が犯罪者を罰する行為であり、被害者に対する損害賠償責任は扱いませんので、加害者から被害者への賠償金の支払いは一切行われないということがあります。損害の賠償責任を取らせるには、被害者が民事上の請求を起こして交渉するか、加害者が応じなければ民事裁判に訴えることになります。これには訴訟費用の負担と、労力や時間を費やさなければなりません。

こうした現実を考えたとき、賠償責任を取らせる手段として、加害者が申し出る「示談」を有効に使うことは、ひとつの方法でもあります。ただし、前述のような加害者の目的を考え、どの時点で示談に応じるかは、判断を要するところです。

また「示談」の内容にも充分な注意が必要です。示談書に署名する際は示談金の全額と引き換えに行い、住所を加害者に知られたくなければ示談書に記載しないこともできます。加害者の弁護士は加害者の都合と利益のために動きます。法律家なら双方に公正に接するというわけではありません。こちらも弁護士を頼むと力になるでしょう。

実際、判決の前に示談が成立し賠償金が支払われると、刑が軽減され、その上犯罪や被害が帳消しになったかのように思われる風潮があります。しかし、例えば交通事故などでは、加害者が被害者に賠償金を支払うのは当たり前の話しであり、それにより被害が無かったことになると思う人はいません。まして、強姦の被害者が賠償金を受け取るのは、民法に則った当然の権利です。それが加害者を免罪したり、また、許したものとするような解釈は、重大な誤りです。

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